「この取引って利益になるの?」「どのタイミングの時価で計算すればいいの?」「利益は出ているけど計算方法がわからない!」仮想通貨の取引はさまざまな種類があり、利益と判断してよいのかわかりにくい取引もあるので、こんな疑問をお持ちの方も多いと思います。中には、こんな風に考えておられる方もいるのではないでしょうか?「仮想通貨から法定通貨には換えてないから、利益はなし!」「ステーキングで仮想通貨を貰ったけど、法定通貨じゃないし計算しなくていいか」「前に受け取った仮想通貨、もう安くなっちゃってるから利益は出てないよね」いえ、その考え方では正しく収支計算できません。そのまま確定申告まで進んでしまうと、過少申告などで大変なことになってしまうかもしれません。そうならないためにも、同じように考えておられる方はぜひこの記事をご一読ください。その他にも仮想通貨周りの税金の基礎知識について以下の記事で解説していますので、合わせてご覧ください。【初心者必見】仮想通貨(暗号資産)の税金とは?基本の計算から確定申告まで丸わかり仮想通貨取引をしたら収支計算が必要現在、仮想通貨に係る税金の計算は「その仮想通貨を使用することにより生じる損益(所得金額)」が課税対象となりますので、収支計算を行わなくてはいけません。仮想通貨の市場では通常の売買や仮想通貨同士の交換だけでなく、マイニングやステーキング、ICOへの参加などさまざまな取引が可能で、その取引ごとに計算方法が変わってきます。計算方法については、主に国税庁が公開したFAQに、場面ごとに応じて記載されています。※国税庁FAQ「仮想通貨に関する税務上の取扱いについて(FAQ)(平成30年11月)」こちらの資料を参考にしながら、仮想通貨取引をしていて触れる機会の多そうな10パターンについて具体例を示しつつ計算方法まで解説していきます。仮想通貨の10パターンの利益発生のタイミング1. 売却益まずは基本的な取引、法定通貨との売買で得た売却益の計算方法から見ていきましょう。売却益の計算方法は譲渡価額 - ( 取得単価 × 売却した数量 ) = 利益となります。たとえば、1ビットコイン(BTC)を100万円で購入し、後日、110万円で売却したとします。この場合の売却益は、110万円 - ( 100万円 × 1BTC ) = 10万円この差額の10万円が所得となり、課税対象になります。BTCが多数、または小数点以下の数量で取引した場合も同様です。たとえば、4BTCを400万円で購入し、後日、0.5BTCだけ55万円で売却したとします。この場合、55万円 - [( 400万円 ÷ 4BTC ) × 0.5BTC ] = 5万円となり、差額5万円が所得となります。2. 仮想通貨で仮想通貨を購入これは見落としがちなパターンですが、法定通貨を介さず、仮想通貨で仮想通貨を購入した場合でも損益を計算し、所得として申告しなければなりません。なぜならこのパターンは、決済に使用する仮想通貨を一度売却して法定通貨に換えてから、その法定通貨で新たに仮想通貨を購入したものと見なされるからです。つまり、決済に使用する仮想通貨を一旦利確している形になるので、損益を計算する必要があります。このパターンを想定していないと、損益が大きく変わってきますので注意が必要です。では、そうならないために計算方法を確認しておきましょう。便宜的に、購入する仮想通貨をコインA、支払う仮想通貨をコインBとして、仮想通貨で仮想通貨を購入した場合の計算方法は、コインAの購入価額 - [ コインBの取得単価 × コインBの支払った数量] = 利益となります。このとき、コインBの価額は支払ったときの時価ではなく、取得単価を元に計算しなければならないので、後から確認できるよう管理しておきましょう。具体例として、2BTCを200万円で購入し、のちにこの内の1BTCだけ支払って10イーサリアム(ETH)を購入したとします。このとき、ETHの時価が11万円だとすると、( 10ETH × 11万円 ) - [( 200万円 ÷ 2BTC ) × 1BTC ] = 10万円となり、差額10万円が所得となります。3. 商品を購入仮想通貨は法定通貨との売買や仮想通貨との交換だけでなく、商品の購入にも使えます。仮想通貨で商品を購入するというのは、現在は日本ではあまり浸透していない印象があると思いますが、実はメルカリでは既にビットコインで決済できることをご存知でしょうか?メルカリでビットコイン決済機能が提供されたのは2024年2月からで、まだ最近の出来事ではありますが、これを皮切りに今後今以上に浸透していくかもしれません。今後、さまざまな通販サイトなどで仮想通貨で商品を購入できるようになったときに備えて、ぜひこの取引における収支計算方法は知っておきたいところです。さて、商品を購入する際、法定通貨を用いた普通の買い物を想像すると「こちらが支払う側なのに利益が出るってどういうこと?」と思われるかもしれません。ここでは仮想通貨だからこその考え方が必要です。まず、計算方法を見ていきましょう。商品価額 - ( 決済通貨の取得単価 × 支払った数量 ) = 利益商品の価額が法定通貨表記だった場合、支払った通貨の総額と差があることがあるため、その差が利益となるわけです。たとえば、100万円で購入した1BTCの内、0.1BTCを支払ってプレゼントを購入しました。このとき、プレゼントは消費税込みで法定通貨表記で15万円でした。この場合、以下のように計算します。15万円 - [( 100万円 ÷ 1BTC ) × 0.1BTC ] = 5万円となり、差額5万円が所得となります。また、商品の価額が仮想通貨表記だった場合、支払う通貨は取得単価、商品は表記されている通貨の時価で計算するため、同じ通貨でも取得時と商品購入時で時価が変わっていれば、その差分が所得となります。同じケースで、100万円で購入した1BTCの内、0.1BTCを支払ってプレゼントを購入したとします。このとき、プレゼントの価額は法定通貨表記がなく、0.1BTCとなっていました。また、決済時のBTCの時価を確認したところ、1BTC あたり110万円となっていたとします。この場合は、時価を考慮して以下のように計算しなければなりません。( 0.1BTC × 110万円 ) - [( 100万円 ÷ 1BTC ) × 0.1BTC ] = 1万円このようにBTCの時価が変化したことによって所得1万円が発生することになります。4. マイニングなどの報酬マイニングやステーキング、流動性供給などの取引は仮想通貨ならではの取引ですが、ここから得られた報酬についてはどう計算すればよいでしょうか?これらの報酬の計算は非常にシンプルです。報酬を取得した時点の時価 × 取得数量 = 所得たとえば、マイニングで0.1BTCを報酬として取得したとき、その時点でのBTCの時価が100万円だったとします。この場合を計算してみますと、100万円 × 0.1BTC = 10万円となり、所得は10万円となります。5. ハードフォークハードフォークとは、簡単に言いますと、ある仮想通貨のシステムをアップデートするためにブロックチェーンが枝分かれし、新旧の通貨に分裂することを指します。ある仮想通貨が古い通貨と新しい通貨に分かれるにあたって、分裂前の通貨を持っていた場合には自動的に分裂後の通貨が付与されることがあります。このとき、付与された通貨については取得原価0円として取り扱われます。なぜなら「取得時点ではその新しい仮想通貨の取引相場が存在していない」と考えられるため、0円として扱われるのです。ですので、この時点では利益は発生していないと考えられます。ですが、これを売却したり決済に利用したりすると、取得原価0円から売却、決済した際の価額分の利益を得たと判断され、所得として計上しなければならないので注意しましょう。6. 手数料仮想通貨の取引では多くの場面で手数料がかかってきます。一つ一つは小さな額かもしれませんが、何度も取引をしているとそれなりの金額になってきますので、収支計算上どのように計算すればよいか確認しておきましょう。手数料と一口に言っても、取引内容によってその性質が変わってきます。まず、仮想通貨を取得する際に係る手数料については取得原価に含めます。たとえば、100万円で1BTCを購入した際に、手数料を500円支払ったとします。このとき、この1BTCの取得原価は100万円 + 500円 = 100万500円となり、100万円でなく100万500円が取得原価となります。次に、売却に係る手数料についてです。仮想通貨を売却した場合に支払った手数料は必要経費として処理されますので、収支計算には反映させません。一期分の収支計算が完了してから、他の必要経費と合算して所得金額から差し引きます。最後に、送金に係る手数料についてです。取引所間やウォレット間の仮想通貨の移動に支払った手数料についても、売却時と同じく必要経費として処理し、収支計算には反映させません。一期分の収支計算が完了してから、他の必要経費と合算して所得金額から差し引きます。7. ICO/IEO/IDO/STO等に参加企業などがトークンを発行して資金調達を図ることを広義的にICOと呼びます。そんなICOには種類がありますが、ここでは仮想通貨に関連してよく見られる取引形態をいくつかご紹介します。そもそもICOとは、企業などが投資家らにトークンを発行して資金調達を図ること全般を指しますが、これがブームとなっていた2017年、プロジェクトがいつまで経っても完成しなかったり、ローンチする気のない詐欺目的のものがあったり、ICOの信頼性は損なわれていきました。それに代わって登場したIEOは、企業と投資家との間にCEX(中央集権型取引所)が介入し、CEXがトークンの販売から上場まで管理する仕組みで、従来のICOにあったローンチされないなどのリスクが軽減されました。また、IEOと似た形式のIDOがありますが、これはIEOがCEXが介入するのに対して、IDOではDEX(分散型取引所)が介入する点が異なります。他にはSTOと呼ばれるものがあり、これは有価証券として発行されたトークンによる資金調達法で、トークンでありながら有価証券としての審査などが行われるため、詐欺などの恐れが極めて低く、安心して参加が可能です。いくつか紹介しましたが、以降、これらをまとめて広義のICOと捉え、当記事では「ICO」と表記します。ICOでは、発行されたトークンを購入することで参加ができます。のちに、そのICOで発行されたトークンが取引所に上場され、それ以後、取引所で取引に利用することができるようになります。ICOに参加した場合、まず、ICOで発行されたトークンを購入した時点で、購入に使用した通貨の損益が確定するため収支計算に反映する必要があります。具体的には、100万円で購入した1BTCを支払ってICOで発行されたトークンAを10,000トークンA購入したとします。このとき、トークンAを購入したときにBTCの時価が110万円まで上がっていたとすると、一旦100万円で購入したBTCを110万円で利確してから、その110万円で10,000トークンAを購入したものと考えられますので、通常の売却益と同じような計算ができます。110万円 - ( 100万円 × 1BTC ) = 10万円この差額の10万円が所得となります。では次に、上場後にトークンを売却した場合を考えてみましょう。先ほど110万円で購入した10,000トークンAの取得単価は、110万円 ÷ 10,000トークンA = 110円となります。これが上場されて時価が120円になっていたとします。この時点でトークンAに市場価格は付いていますが、まだ所得とは見なしません。これを法定通貨に限らずBTCなどの市場価格が存在する通貨に換えた段階で所得と見なします。ですので、仮にトークンAを120円で売却すると、売却時点で120円 × 10,000トークンA - ( 110円 × 10,000トークンA ) = 10万円となり、差額10万円が所得となります。8. ボーナス・エアドロップ仮想通貨の中には、キャンペーンなどで特定の条件をクリアすることで報酬として仮想通貨を取得できることがあります。このようなものはボーナス・エアドロップと呼ばれ、基本的に無償で仮想通貨を得られるため利用されたことのある方も多いでしょう。こうした無償で配布される仮想通貨は、自動的に自分の知らないところでウォレットに送られていることがあるため、収支計算では気を付けておきたいところですね。ボーナス・エアドロップの収支計算自体は非常にシンプルで、取得した時点の時価で所得を算出します。取得した時点での時価 × 取得量 = 所得たとえば、エアドロップで0.1BTCが自分のウォレットに送金されてきたとして、この送金された時点でのBTCの時価が100万円だったとします。このとき、その後にBTCの時価が110万円に上がったとしても0.1BTC × 100万円 = 10万円というように取得した時点での時価で計算し、10万円が所得として計上されます。9. 相対取引仮想通貨は、取引所を介さずに売買することも可能です。こうした相対取引で仮想通貨を売却した場合でも、所得としては通常の売買取引として計算することになります。ですので、1.売却益の項目で解説しましたものと同じ計算方法となります。10. 証拠金取引仮想通貨の証拠金取引は暗号資産FXなどとも呼ばれ、すべての取引所ではありませんが日本でも利用できる取引所があります。証拠金取引はBUY、またはSELLのポジションを持ち、その反対取引を行って決済することで利益を得る取引ですが、この場合、決済後に得られた利益をそのまま計上します。たとえば、1BTC100万円のところでBUYのポジションを持ったとして、その後、1BTC110万円のところで決済したときには10万円の利益が発生しますよね。これがそのまま所得として計上できるので、計算方法として非常にシンプルです。また、取引によってはこれらの損益が仮想通貨で得られる場合もあります。このときに注意しなければならないのは、損益として受領した仮想通貨に対して、通貨が増えて利益が上がった場合には時価で計算し、反対に減って損失が発生した場合には取得単価で計算しなければならないことです。まずは、利益があった場合について考えてみましょう。たとえば、BTC/ETHペアで証拠金取引を行い、利益として0.1ETH取得したとして、このときのETHの時価が50万円だったとします。のちにETHの時価が変化したとしても、この0.1ETHを計上する際には50万円 × 0.1ETH = 5万円となり、5万円の利益として扱わなければなりません。では、逆に損失が発生した場合はどうでしょうか。先ほどと同様、たとえば、BTC/ETHペアで証拠金取引を行い、今度は損失として0.1ETH減少したとして、このときのETHの時価が50万円だったとします。このとき、取引に利用していたETHの取得単価が40万円だった場合、損失が確定したときのETHの時価は50万円ではありますが、取得単価である40万円で損益計算します。40万円 × 0.1ETH = 4万円となり、4万円の損失として扱います。正しく収支計算をするのは難しい ここまで解説してきましたように、取引内容によっては取得単価を管理しておかなければならなかったり、現在の時価を確認しなければならなかったり、複数の取引をしている方にとってこれらを正確に収支計算するのは難しいですよね。中にはシンプルな計算方法の取引もあるものの、そもそも取引の種類が多数あり、どの取引にどんな計算方法を当てはめればよいか考えるところから始めなければなりません。多数の取引履歴をすべて確認して収支計算したとしても、これだけ複雑では間違えてしまうリスクもあります。クリプトリンクでは、そんな大変な作業やリスクを回避する一助として、取引履歴やウォレットアドレスを登録するだけで簡単に収支計算が行える便利なツールを提供しておりますので、ぜひご活用ください。クリプトリンク 損益計算ツールまた、「取引量が多く登録だけでも大変」、「登録しても正確に計算できているか心配」といった方のために、収支計算をお任せできる計算代行サービスもございますので、お問い合わせください。クリプトリンク 計算代行サービスまとめ本記事では、仮想通貨の利益が発生するタイミングとその計算方法について、10パターンをピックアップしてご紹介しました。現状でよくある取引をピックアップしてご紹介しましたが、もちろんこれ以外にも利益が発生する可能性がある取引はありますし、さらに言えば、今後新たな取引形態が生まれてくるかもしれません。今回ご紹介したものの中でさえ、利益として計上すると知らなかったものや計算方法がわかっていなかったものがあると思います。特に、仮想通貨で仮想通貨を購入する取引は単なる物々交換のように捉えてしまい、利益を計算する必要があるなんて意外に思われた方も多いでしょう。仮想通貨取引は、通常の法定通貨を用いた売買取引とは考え方が違う部分があり、収支計算が複雑になりやすく、計算方法も間違えやすいので注意が必要です。確定申告に向けて、こうした作業が心配な方は、ぜひ一度クリプトリンクサービスのご利用をご検討ください。ご自身で収支計算される際、簡単に計算が可能になるツールを提供しております。クリプトリンク 損益計算ツールまた、より確実かつ簡単に収支計算を行える計算代行サービスもご活用ください。クリプトリンク 計算代行サービス