「あれ?なんでこの取引所にビットコインを送付できないの?」「こっちの取引所で取り扱ってない通貨を買いたいのにBTCを送金できない!」「送金できない取引所になんとか送金する方法はない?」国内や国外の暗号資産取引所を利用していてこのようなことを思ったことはありませんか?複数の取引所を利用していると仮想通貨を別の取引所に送金したいことはよくありますよね。たとえば、複数の取引所で同じ仮想通貨を購入したけれど、管理が煩雑なので一か所にまとめたいときや、特定の取引所でしか取り扱いのない仮想通貨を、別の取引所で所持していた仮想通貨で購入したいときなどがよく送金を利用する場面でしょうか。ですが、取引所間で仮想通貨の送金ができない取引所があります。おそらく複数の取引所を利用されている方の多くは、いざ送金しようと思ったときに送金できないことに気付いて戸惑われたことでしょう。このとき、多くの方は単に「対応していないだけかな」と思われたと思いますが、実はちゃんと理由があり、この理由を知っておくと取引所の送金画面でいちいち確認しなくてもどの取引所に送金できるかを知ることができます。本記事では、そんな送金ができない理由と送金ができる/できない取引所の一覧を紹介しておりますので、送金する際に役立てていただければと思います。また、最後には送金できない取引所に送金する方法も解説しておりますので、ぜひ最後までご覧ください。なぜ送金できないのか早速ですが、そもそもなぜ送金できない取引所があるのでしょうか?もちろん、すべての取引所間で取引できる方が便利ですから、このようなシステムになっているのにはある理由があります。仮想通貨が送金できない理由は、「トラベルルール」の実施によって、取引所ごとに導入しているシステムが異なっているからです。トラベルルールとは実を言いますと、仮想通貨の取引所が生まれた頃から現在のように送金できない問題があったわけではありません。技術的な問題や規制などで送金できないことはあったかもしれませんが、少なくとも現在あるルールとそれに伴うシステムはなかったため、現在のような形での送金できない問題はなかったのです。そのルールが「トラベルルール」と呼ばれるものです。トラベルルールは、マネーロンダリング、テロ資金供与といった犯罪目的で収益を移転することを防止するための国際的な規制枠組みです。日本では2023年6月1日に施行された「改正犯収法」(改正犯罪収益移転防止法)にこのトラベルルールが盛り込まれ、日本の取引所ではトラベルルールの実施が義務付けられました。では、トラベルルールの実施で具体的に何が行われているのでしょうか?以下は、金融庁より公開されているトラベルルールの施行に関する資料です。細かな記載もありますが、仮想通貨に焦点を絞って簡単に説明しますと「仮想通貨の取引所は、通貨を送付するときに送付人・受取人に関する情報を取得し、送付先の取引所に通知事項を送付しなければならない」ということです。ここで言う「通知事項」とは、資料に記載のこれらの情報のことです。これらを取引所が通知することによって、取引経路を追跡できるようになり、犯罪目的で資金を移転することへの対策となっているのです。そのため、日本でトラベルルールが施行されてからは、国内の取引所で仮想通貨の送付を行う際にはこれら通知事項の通知が行われるようになりました。原因は取引所の通知システムの違いここまでトラベルルールについて解説しましたが、ではどうしてそのトラベルルールの影響で送金できない取引所があるのでしょうか?それはトラベルルールそのものではなく、トラベルルールによって必要になった通知事項の通知システムが取引所によって違うという理由によるものです。異なる通知システムの取引所間ではトラベルルールにおける通知ができず、通知義務が果たせなくなるため送金ができないようになっています。通知システムはさまざまありますが、主に国内の取引所で導入されているシステムは「TRUST」と「Sygna」の二つです。TRUST(Travel Rule Universal Solution Technology)はアメリカの大手取引所であるCoinbase開発のシステムで、一方、Sygnaは台湾のセキュリティ企業CoolBitX開発のシステムです。これらの内、同じ通知システムを採用している取引所同士でなら問題なく仮想通貨の送金ができるのですが、異なる通知システムを採用している場合は送金ができないという問題が発生します。この通知システムは、各取引所のヘルプやトラブルシューティングのページにて「トラベルルール」で検索をかけると大抵記載してありますので、そちらで確認すると送金したい取引所間で同じシステムを採用しているか調べられます。国内で送金ができない取引所一覧国内の主だった取引所ではどの通知システムを採用しているのか、通知システムの違いによって送金できない取引所はどこなのか、一覧にまとめましたのでご覧ください。国内でも主要な仮想通貨取引所である、Coincheck、bitFlyer、BinanceJapan、BitBank、GMOコイン、DMM BitCoin、SBIVCトレード、BitTrade、BITPOINT、Zaif、LINE BITMAX、OKCoinJapanの12取引所を対象として通知システムを調査しました。通知システム採用している取引所TRUSTCoincheckbitFlyerSBIVCトレード *1BITPOINT *1SygnaBitBankGMOコインDMM BitCoinSBIVCトレードBitTradeBITPOINTZaifLINE BITMAXOKCoinJapanGTR *2BinanceJapan*1 2024年6月現在、採用としているが同システムへの送金は未対応*2 「Global Travel Rule」国内で唯一BinanceJapanのみ採用している通知システムこちらの表の内、採用している取引所の列で同じ枠に入っている取引所間でなら、通知システムによる送金ができない問題は発生しません。ご自身の利用している取引所と照らし合わせ、頻繁に取引する取引所ではどこに送金できるか事前に把握しておくと、後々送金が必要になったときに役立つかもしれません。とは言いましても、それぞれの取引所には独自の審査基準や規定があるなどの理由で、通知システム以外の要因で送金できないこともあります。トラベルルールが施行されてから、ほとんどの国内取引所は仮想通貨の送金ができる/できない取引所を取りまとめて掲載していますので一度確認してみることをおすすめします。本記事では取り上げませんが、海外取引所についても送金できない取引所はありますので、そちらに関しても各取引所のヘルプなどから事前に確認しておくと安心です。送金できない取引所間で仮想通貨を移動する方法では、送金できない取引所間で仮想通貨を移動するのは諦めるしかないのでしょうか?いえ、送金する方法はいくつかあります。もちろん、トラベルルールを遵守するために通知システムは必要なものですから、通知システムが違う取引所にワンステップで送金する裏技のようなものはありません。ですが、ちゃんとトラベルルールを遵守した上で正規に送金する方法がありますので、そちらを紹介していきましょう。プライベートウォレットを経由する現状ではもっとも手軽な方法として、プライベートウォレットを経由して送金する方法があります。プライベートウォレットとは、仮想通貨を取引所ではなく自身のハードウェアやソフトウェアで管理する方法で、代表的なものではMetaMaskやTrustWalletがあります。DeFiを利用されている方なら馴染みがあると思います。送金できない取引所間では、送金元の取引所からプライベートウォレットに送金し、プライベートウォレットから送金先の取引所に送金することで、送金が実現できます。送金元取引所 => プライベートウォレット => 送金先取引所ですが、プライベートウォレットの扱いにはセキュリティ面で注意が必要ですし、どのブロックチェーンに仮想通貨を送ったかなど知識が必要な部分があるため、仮想通貨取引を始めたばかりの初心者の方には難しいかもしれません。非常に手軽な方法ではありますが、ある程度仮想通貨取引に慣れている方向けの方法と言えるでしょう。どちらのシステムにも対応した取引所を利用・経由するプライベートウォレットほど手軽ではありませんが、国内であればどちらのシステムにも対応した取引所を利用・経由する方法もあります。先ほどの表にも記載した通り、SBIVCトレードとBITPOINTはどちらの通知システムも採用しています。どちらも以前からSygnaのシステムを導入しており、Sygnaを採用している取引所にしか送金できなかったのですが、2024年4月にTRUSTも導入することを発表しました。2024年6月現在ではまだ送金はできませんが、今後送金ができるように整備されたらこちらの取引所を経由することで送金できない取引所に送金できるようになります。送金元取引所 => Sygna/TRUST対応取引所 => 送金先取引所現状では、BinanceJapanはまた違った通知システムを採用しているので送金は難しいですが、国内の大半の取引所はSygnaかTRUSTを採用しているので、整備されればプライベートウォレットを介さなくてもほとんどの国内取引所に送金できるようになります。取引所に口座を開設しなければならないため、プライベートウォレットよりは手間がかかりますが、一度開設してしまえばあとは取引所の送金画面を操作するだけで送金できますし、国内の事業者に任せられますからセキュリティ面でも安心です。一度法定通貨に換えて出金、入金するここまで二つの方法を紹介しましたが、プライベートウォレットを経由する方法は初心者向けではありませんし、どちらのシステムにも対応した取引所を経由する方法は2024年6月現在では使えず、またBinanceJapanへ送金したい場合には使えません。ここまで紹介した方法を使わないとすると、一度法定通貨に売却し、銀行経由で移動するという方法もあります。一度利確を行うため利益が発生してしまう場合もありますが、移動したい暗号資産が移動できない場合に、確実に移動できるため、一つの手法として検討してもよいかと思います。まとめここまで送金できない取引所がある理由とその具体的な一覧、そして送金できない取引所に送金する方法について解説してきました。最後に簡単におさらいしておきましょう。トラベルルール施行によって通知システムが導入されたほとんどの国内取引所ではSygnaかTRUSTが導入されており、このシステムが違う取引所間では送金できないプライベートウォレットやどちらのシステムにも対応した取引所を利用することで送金できない取引所間でも送金できるトラベルルールは犯罪目的での資金の移動を防ぐために必要なものではありますが、その通知システムが原因で送金できないという問題が発生しています。ですが、今回紹介したような方法を使えば、ルールを遵守した上で送金できない取引所へ送金できますので、ぜひ一度試してみてはいかがでしょうか?