仮想通貨(暗号資産)は、個人投資家だけでなく法人にも広く利用されるようになり、その取引方法や利用用途が多様化しています。そのため、法人として仮想通貨を購入・保有しているだけではなく、売上として仮想通貨を受け取ったり、経費・費用を仮想通貨で支払ったりしている法人もいるかと思います。仮想通貨を取り扱う法人には特有の税務処理が求められますが、「仮想通貨を事業として取引している場合の税金ってどうなるの?」「売上や経費を仮想通貨で行なった場合の収支計算の方法は?」などの疑問を抱いているのではないでしょうか?そこで今回は、法人が事業として仮想通貨を取り扱う場合の計算方法や税金について説明していきます。また最後には、仮想通貨の損益計算ツール「クリプトリンク」を使って、簡単に計算する方法を紹介しますので、ぜひ最後までご覧ください。仮想通貨の税金とはまず最初に、仮想通貨にかかる税金について、見ていきましょう。法人で取引をしている場合法人が仮想通貨を取引する場合、その取引から生じる利益は法人税の対象となります。仮想通貨の売買による利益は、通常の事業所得として計上され、決算時に法人税率が適用されます。また、決算時に保有している仮想通貨についても、期末時点で時価評価を行う必要があります。事業として取引をしている場合仮想通貨の取引を事業として行なっている場合ですが、こちらの税金も基本的には先ほど説明した、法人で取引をしている場合と変わりません。法人が仮想通貨を事業の一部として利用する場合、取引のたびにその時点での仮想通貨の価格を基に損益を計算する必要があります。この後詳しく説明していきますが、たとえば、商品やサービスの売上を仮想通貨で受け取った場合、その受領時の市場価格に基づいて収益を計上します。これにより、仮想通貨での取引内容が売上や費用に直接影響を与えます。法人が事業として行う仮想通貨取引それでは次に、法人が事業として行う仮想通貨取引のいくつかのケースについて、計算方法を紹介していきます。仮想通貨を売上として受け取ったまずは、暗号資産で売上の受け取りをするケースです。例えば、仕事の売上を日本円ではなくBTC(ビットコイン)やETH(イーサリアム)などの仮想通貨で受け取る場合、売上として計上する金額と併せて、その受け取り時点の市場価格との差額がある場合には収益として計上する必要があります。具体例:法人が、クライアントからサービスの対価として0.1 BTCを受け取ったとします。この受け取り時点でBTCの価格が1 BTC=1,200万円の場合、報酬は120万円(0.1 × 1,200万円)となります。この場合、1回100万円の依頼を受けていたので売上として100万円を計上し、受け取ったBTCの時価との差額20万円が仮想通貨の利益として計上されます。売掛金等の回収を仮想通貨で受け取った次に、暗号資産で売掛金の回収をするケースです。売上の受け取りと似ていますが、売掛金の回収を仮想通貨で行う場合も、回収時点の市場価格を基に取引を処理します。売掛金だけでなく、未収金の回収や貸付金の回収なども仮想通貨で受け取っている場合には、売上と同様の収支計算の処理が必要です。具体例:ITサービスを提供する法人が、クライアントから50万円の売掛金を1 ETHで回収したとします。この時、回収時点でのETH価格が1 ETH = 55万円であれば、50万円が売掛金回収額として計上されます。さらに、受け取ったETHの時価との差額5万円が仮想通貨の利益として計上されます。経費・費用等を仮想通貨で支払った仮想通貨を用いて経費や費用を支払うケースもあります。例えば、事業に必要なマイニング機器を仮想通貨で購入したり、サービス利用料を支払ったりする場合です。仮想通貨で経費を支払う場合は、その時点で仮想通貨を売却したとみなされます。このため、取得原価との差額によって損益が発生します。具体例:法人が保有する1 BTC(取得原価1,000万円)から、サービス利用料として0.02 BTCを支払ったとします。この支払い時点でのBTC価格が1 BTC=1,500万円であれば、経費は30万円(0.02 × 1,500万円)となります。この時、0.02 BTCの売却が発生しているため、0.02 × 1,500万円 - 0.02 × 1,000万円 = 10万円仮想通貨で10万円の利益が出たことになります。未払経費・未払費用・借入の返済を仮想通貨で行なった法人が未払経費や借入金を仮想通貨で返済する場合も、仮想通貨を売却したとみなされ、取得原価との差額で損益が計算されます。この処理は、経費の支払いと基本的に同様です。具体例:法定通貨で100万円の借入をしている法人が、返済として0.08 BTCを支払ったとします。支払ったBTCの取得単価が1 BTCあたり1,000万円であった場合、返済時点で0.08 BTCを100万円で売却したという処理が発生しているため、100万円 - 0.08 × 1,000万円 = 20万円BTCの売買利益として20万円の利益が出たことになります。今回は、例として法定通貨で借りたものを暗号資産で返済した例を記載しましたが、借入の返済については状況により処理が異なる場合がありますので、顧問税理士や税務署へご相談の上処理をされることを推奨いたします。事業でNFTを制作して販売した法人がNFT(非代替性トークン)を制作・販売する場合、NFTの販売額が収益として計上されます。また、NFT制作にかかった費用は経費として処理できます。具体例:デザイン会社が制作したNFTを1 ETHで販売したとします。販売時点で1 ETH=50万円の場合、売上は50万円(1 × 50万円)の利益として計上されます。同時に、NFTを発行する際に発生したプラットフォーム手数料が1万円だった場合、手数料は経費として計上されます。そのため、49万円(50万円 - 1万円)が最終的な利益として計上されます。クリプトリンクを使って明細の登録&収支計算をしようそれでは最後に、仮想通貨の損益計算ツール「クリプトリンク」を使って、これまで説明したケースで仮想通貨取引をした場合の登録&計算を紹介します。仮想通貨を売上として受け取ったクリプトリンクにログイン後、収支計算画面の現物取引のところで、「新規明細の登録」を行います。取引種別を「売上」にして、先ほどの具体例のケースで入力しますと、以下のようになります。上記の内容を登録し、再集計を行いますと、以下のように収支合計が20万円と計算され、先ほど手動で計算した結果と同じになります。売掛金等の回収を仮想通貨で受け取った売上の登録と同様に、収支計算画面の現物取引のところで、「新規明細の登録」を行います。取引種別を「売掛金・未収金の回収」もしくは「貸付金の回収」にして、先ほどの具体例のケースで入力しますと、以下のようになります。この取引種別では、仕訳作成時に必要な勘定科目の設定もここで行えますので、勘定科目も選択します。上記の内容を登録し、再集計を行いますと、以下のように収支合計が5万円と計算され、先ほど手動で計算した結果と同じになります。経費・費用等を仮想通貨で支払った売掛金等の回収の登録と同様に、収支計算画面の現物取引のところで、「新規明細の登録」を行います。取引種別を「経費・費用」にして、先ほどの具体例のケースで入力しますと、以下のようになります。上記の内容を登録し、再集計を行いますと、以下のように収支合計が10万円と計算され、先ほど手動で計算した結果と同じになります。未払経費・未払費用・借入の返済を仮想通貨で行なった経費・費用の登録と同様に、収支計算画面の現物取引のところで、「新規明細の登録」を行います。取引種別を「未払経費・未払費用の支払い」もしくは「借入の返済」にして、先ほどの具体例のケースで入力しますと、以下のようになります。この取引種別では、仕訳作成時に必要な勘定科目の設定もここで行えますので、勘定科目も選択します。上記の内容を登録し、再集計を行いますと、以下のように収支合計が20万円と計算され、先ほど手動で計算した結果と同じになります。事業でNFTを制作して販売したクリプトリンクにログイン後、収支計算画面のNFT取引のところで、「新規明細の登録」を行います。NFTの組成や発行の明細は、取引種別を「NFT組成」にして、先ほどの具体例のケースで入力しますと、以下のようになります。次に、NFTの売上の明細は、取引種別を「売上」にして、先ほどの具体例のケースで入力しますと、以下のようになります。上記の内容を登録し、再集計を行いますと、以下のように収支合計が50万円と計算され、先ほど手動で計算した結果と同じになります。また、NFT組成時の手数料が1万円あった場合の計算結果は以下のように収支合計が49万円と計算され、先ほど手動で計算した結果と同じになります。まとめいかがでしたか?今回は、法人が事業として仮想通貨取引を行う場合の計算方法や税金について解説しました。仮想通貨を取り扱う法人にとって、税務処理は非常に重要な課題です。売上や経費を仮想通貨で計上する際には、正確な記録と適切なツールの活用が欠かせません。クリプトリンクなどのサービスを活用し、効率的に税務処理を行いましょう。