2024年8月に入って、日経平均株価とともに仮想通貨の価格が軒並み下落しました。最近になって仮想通貨に興味を持って仮想通貨を保有していた方は驚いたと思いますが、株式はともかく仮想通貨の歴史を見てみると、こうした大きな下落は珍しくありません。過去に起きた大きな下落の要因はさまざまで、ある一つの仮想通貨だけ下落した事例もあれば仮想通貨全体が下落した事例もあります。そこで本記事では、2024年8月に起きた下落の状況と合わせて、過去に起きた大きな下落の原因と言われているものについて解説します。また最後には、価格が下落し、仮想通貨取引で損失が発生してしまったときの税金の扱いについても解説していますので、今回の相場で税金周りの制度が気になる方はぜひ最後までご覧ください。2024年8月の仮想通貨相場まずは2024年8月の仮想通貨相場を見てみましょう。仮想通貨相場はCoinMarketCapやCoinGeckoといったサイトで確認できます。主要な通貨の下落状況2024年8月6日現在、主要な仮想通貨の相場は以下のようになっています。こちらはCoinMarketCapにて、登録されている仮想通貨を時価総額順に並べた内の上位5通貨を表示しています。こちらを見てみますと、ステーブルコインであるテザー(USDT)を除いて8月6日は急落から反発が起こった直後のため、1時間での推移で+0.2~+1.1%、24時間での推移は+11~+28%と大きく価格が上がっています。ですが、7日間での推移を見てみますと、反発があったにも関わらず、ー14~ー24%と大幅な下落が起こっていることが分かります。中でもイーサリアム(ETH)とソラナ(SOL)で20%以上の下落が起こっていますが、これら上位5通貨以外の通貨の中には30%を超える下落を記録しているものも多数あるため、特別この2通貨の価格が下がっているわけではありません。ステーブルコイン以外の仮想通貨のほとんどが大きく下がったこの状況ですが、日本に限っていえばステーブルコインに換金しても安心できない状況がこのときはありました。ステーブルコインについては以下の記事で解説していますので、合わせてご覧ください。ステーブルコインとは?特徴やビットコインとの違いをわかりやすく解説円高の影響もステーブルコインで保有していても安心できない状況があったというのも、このとき仮想通貨の価格の下落と同時に、為替市場ではこれまで数年間進んでいた円安が一転して円高方向に大きく動きました。7月に入ってしばらくしてから円高に向かい始めていますが、特に7月の終わりから8月始めの5日間あたりで急激に円高方向に動いています。前節では米ドル換算での仮想通貨の動きを表示していましたが、日本円換算で見てみますとより大きく値下がりしていることがわかります。日本円で仮想通貨を買って日本円で売る場合は、日本円換算での価格のみ気にしていればよいですが、海外取引所や分散型取引所(DEX)を使っていた場合は米ドルと連動するステーブルコインで取引することも多いので、為替レートの影響を大きく受ける場合があります。ここで米ドルと連動しているステーブルコインであるUSDTを見てみますと、円高方向に為替レートが動いているので、USDTの日本円換算での価格は7日間でおよそ6%下がっています。そのため、今回のようなケースでは、仮想通貨の下落を予期してステーブルコインに交換していたとしても、円高方向に為替が動いた影響で損失が出てしまう場合があります。法定通貨と連動しているもの以外にも金や白金の価格と連動しているステーブルコインもありますが、金の価格も同時に下がっている状況でしたので、いずれもステーブルコインだからと過信しないように気を付けましょう。ステーブルコインにはどんなものがあるか詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。ステーブルコインの種類とは?特徴や代表的な関連銘柄も7個紹介仮想通貨が暴落する原因とは今回の暴落に関しては、アメリカの雇用統計が発表され景気に対する不安が広がった影響とも、日本での金利上昇や為替の急激な変動による恐怖感によるものとも言われ、さまざまな憶測がされています。また、仮想通貨市場は例年6月~9月あたりに価格が低迷する傾向があるとも見られており、このような季節性の要因が下落を押し進める場合も考えられます。このように暴落の明確な要因を見つけるのは難しい場合も多いですが、仮想通貨市場で過去に起きた暴落の中には大きな要因があるものもあります。では、そうした暴落にはどのような原因があったのか確認してみましょう。1. マウントゴックスの破綻有名なものでは、仮想通貨取引所のマウントゴックスの破綻があります。仮想通貨の歴史の中でも初期に起きたビットコインの大きな下落で、仮想通貨がメディアで取り上げられるほど盛り上がる前の事件なので知らない方も多いかもしれません。2014年、当時では最大級だった暗号資産交換業者であるマウントゴックスが債務超過により破綻しました。その背景には、2011年に同社に対して行われたハッキングや、2013年の米財務省による規制の強化などがあったとされています。規制や市場の活気といった要素だけでなく、こうした規模の大きな取引所の動向によって仮想通貨の価格が大きく動くこともあります。2. テラショックテラショックは仮想通貨が話題になり始めた頃の大きな事件ですので、知っている方も多いのではないでしょうか。2022年、本来は米ドルの価格と連動しているステーブルコインであるはずのテラUSDのペッグ(裏付け)が外れ、米ドルから大きく乖離した価格に下落しました。その影響でテラUSDとルナ(LUNA)の価格が暴落し、10分の1程度にまで下がりました。ステーブルコインは仮想通貨の中でも安定したものであると思われていますが、この例からステーブルコインだからといってリスクがまったくないわけではないことがわかります。3. アメリカや中国など影響力のある国による規制国による規制、特にアメリカや中国といった仮想通貨経済に対して大きな影響力のある国がなんらかの規制を発表、施行したときに大きく価格が動く場合があります。たとえば、2021年には中国の最高規制当局が仮想通貨の取引とマイニングを禁止する規制を行ったため、ビットコインの下落が起こりました。また、同年にアメリカでバイデン大統領が仮想通貨取引の規制法案に署名するといったこともあり、仮想通貨市場に影響を及ぼしました。4. クジラやハッカーの存在仮想通貨市場におけるクジラとは、仮想通貨市場全体あるいは特定の仮想通貨の価格に影響を与え得るほど大量の仮想通貨を運用している大口投資家、グループのことを指します。クジラには機関投資家も含まれるので、これらのクジラが売りに動いたときには価格の大幅な下落が起こる場合があります。また、個人やグループの動きという観点では、ハッカーの存在も仮想通貨の価格に影響を与えます。2024年にあった事件では、ミームコインであるノーミ―(NORMIE)がハッキングによる攻撃を受けて価格が99%も下落しました。ミームコインのこうした危険性やメリットに関してはこちらの記事も合わせてご覧ください。今話題のミームコインとは?特徴や買い方、注意点、損益計算方法を網羅的に解説仮想通貨の価格が下がったときの税金について仮想通貨の価格が下落したとき、気になるのは税金の制度です。下落によって最終的に損失で終わってしまった場合、損益通算や赤字の繰越はできるのか、税金を支払う必要がないから損益計算はしなくてもよいのか、解説していきます。損益通算はできる?仮想通貨取引の損益の損益通算は、一定の条件を満たす所得となら可能です。一定の条件とは、以下の三点のことです。雑所得に該当するもの総合課税の対象となっているもの同一年内に発生した損益であることこれら三点をすべて満たす所得とであれば損益通算が可能です。たとえば、国内FXで得た利益は同じ雑所得に分類されますが、総合課税ではなく申告分離課税なので損益通算ができないので注意が必要です。投資関連の収入でなくとも、たとえばアフィリエイトなどを副業で行っており、それらを雑所得として申請しているのであれば、これらと損益通算できる可能性があります。赤字の繰越はできる?仮想通貨取引で損失が発生した場合、赤字の繰越はできません。赤字の繰越は事業所得などで用いることのできる制度で、その年の赤字を翌年以降の3年間に繰り越し、黒字が出た年に相殺することができる制度です。ですが、雑所得ではこの制度は適用されないため、損失を相殺することはできません。損失のみでも損益計算はしようでは、赤字の繰越ができないからといって、年間の収支が損失になった年は損益計算する必要はないのでしょうか?いえ、仮想通貨取引に関しては損益計算を毎年行う必要があります。仮想通貨取引の損益計算の場合、確定申告に向けた法定通貨換算の損益の算出だけでなく、その年にどれだけの仮想通貨を取引し、翌年にどれだけの仮想通貨を繰り越すかを正確に計算する意味合いもあります。そのため、仮想通貨取引をしているにも関わらず損益計算していない年があると、その翌年から正確な計算をすることが難しくなってしまいます。ですので、損失のみでも損益計算は忘れずに行いましょう。クリプトリンクでは簡単に仮想通貨の損益計算ができるツールを提供していますので、ご活用ください。クリプトリンク 損益計算ツールまとめここまで仮想通貨の下落の原因と損失が発生したときの税制度について解説しました。最後に簡単におさらいしておきましょう。仮想通貨の暴落には取引所の破綻や規制、クジラの動きなどさまざまな要因がある仮想通貨取引の損失を損益通算するには条件があり、赤字の繰越はできない損失しかない場合でも損益計算は必要仮想通貨は株式などと比べてボラティリティが高く、さまざまな要因で大幅な上昇、下落が起きることがあります。ですので、仮想通貨では特に、余剰資産だけで投資をするなどリスク管理を徹底しなければなりません。また、通年で損失となってしまったときには利益がないからと損益計算を忘れてしまいがちですが、翌年以降の損益を正確に計算するためにも必ず毎年損益計算を行いましょう。その際にはぜひクリプトリンクの損益計算ツールをご活用ください。クリプトリンク 損益計算ツール