みなさんは仮想通貨の歴史についてご存知でしょうか。仮想通貨自体、ビットコイン(BTC)が登場した頃から知っているという方もいるとは思いますが、ほとんどの方は2017~2018年前後に仮想通貨がメディアでも取り上げられ話題になり始めてから知ったのではないでしょうか。そのため、それ以降に起こった仮想通貨の暴落や高騰の話題、仮想通貨の値動きに影響するようなイベントや事件についてしか知らない方も多いと思います。そこで今回から、本記事をVol.1としていくつかの記事に渡って仮想通貨の歴史を順を追って解説していくシリーズ記事を執筆していきます。「ビットコインってどこから始まったの?」「○○年には仮想通貨に何があったんだろう?」「仮想通貨に関する事件って何があるの?」こうした疑問をお持ちの方や、仮想通貨の歴史を知りたいという方に向けたシリーズ記事となっておりますので、ぜひ興味をお持ちの方は今後の記事も合わせてご覧ください。~2008年 - ビットコインが生まれるまでデジタル通貨の始まりデジタル通貨とは、デジタル上、特にインターネット上で管理や保管、取引される通貨などの資産のことを指します。仮想通貨とは区別されることもありますが、基本的には仮想通貨もこのデジタル通貨の一部と言えます。デジタル通貨というアイデア自体は仮想通貨の登場よりも10年以上昔、1982年に既に登場していました。1982年、DavidChaum氏が電子マネー「eCASH」を考案し、1989年には電子マネー企業であるDigiCashをオランダのアムステルダムに設立しました。以降、デジタル通貨は1990年代のドットコムバブル期に開発が進められ、1996年に金を裏付けにしたデジタル通貨であるE-Goldが設立されるなど、さまざまなデジタル通貨や活用法が生み出されました。他にも、同年代では1997年にはコカ・コーラがモバイル支払いのできる自動販売機を投入する、1998年にはPayPalが発足するなど、デジタル通貨が普及していきました。ビットコインの先駆け「BitGold」の考案1998年、Wei Dai氏がb-moneyという匿名分散電子金融システムの概要を発表し、すぐ後にNick Szabo氏がBitGoldを考案しました。BitGoldは、現在のビットコインを始めとするいくつかの仮想通貨にも用いられているProof-of-Work(PoW)という仕組みを導入した分散型デジタル通貨で、ビットコインの前身ともいえるものでした。PoWとは、ある一定の作業(仮想通貨では複雑な計算問題)を課すことでセキュリティを高め、価値を証明するシステムのことです。ビットコインなど仮想通貨におけるPoWの使われ方についての詳細は以下の記事をご覧ください。仮想通貨(暗号資産)のマイニングの税金・確定申告ってどうなるの?税金計算ツールへの登録方法も解説結局、BitGoldは実装されませんでしたが、BitGoldの仕組みは「ビットコインのアーキテクチャの直接的な先駆け」と呼ばれています。2008年 - ビットコイン誕生サトシ・ナカモトによるビットコインの論文が発表2008年に入ると、いよいよ最初の仮想通貨であるビットコインに関する話題が現れます。2008年11月、サトシ・ナカモトという謎の人物によって、metzdowd.com内の暗号理論に関するメーリングリストにビットコインに関する論文が発表されました。この論文が発表されたすぐ後、2009年に入るとビットコインのソフトウェアがネット上に公開され、早速運用が開始されていきます。サトシ・ナカモトとはサトシ・ナカモトはビットコインの生みの親ともいえる存在で、2024年現在でも正体不明の人物(グループとも推測されている)の名前です。サトシ・ナカモトはビットコインに関する論文を発表し、ビットコインのソフトウェアの開発、公開をするとともにビットコインの最初のマイニングを行いました。また、その後も他の開発者とともにビットコインのソフトウェアのリリースに関わり続けましたが、次第に他の開発者に管理を任せ始め、2010年半ばからコミュニティとの接触を控えるようになっていき、姿を見せなくなりました。そんなサトシ・ナカモトが最初に登場したのは、先ほど解説したmetzdowd.com内の暗号理論に関するメーリングリストに論文が発表されたときで、この時点ではメーリングリストの誰もこの名前を聞いたことがありませんでした。ここでサトシ・ナカモトと推測されたことのある人物の一部を紹介しましょう。金子勇P2P技術を用いたファイル共有ソフトWinnyやSkeedCastを開発した日本人プログラマー。Winnyが著作権侵害に利用されたため2004年に著作権違反幇助の疑いで逮捕、後に無罪となったWinny事件は映画にもなっています。Hal Finneyサトシ・ナカモトから最初のビットコイン取引を受けた人物であり、BitGoldのプロジェクトに携わった数少ない人物。Nick Szabo先ほど解説したBitGoldの考案者。Jed McCalebファイル共有サービスOvernet、eDonkey2000の創始者であり、ビットコインの取引所マウントゴックスの設立者。Ripple社を創業し、のちにStellarの共同創業者兼CTOを務めるなど、仮想通貨の発展に貢献した。他にも、サトシ・ナカモトに関してはこんな事件もあります。2016年5月、オーストラリアの起業家Craig Steven Wright氏がサトシ・ナカモトだと自ら名乗り出ました。彼は自分とDave Kleimanでビットコインのシステムを考案したと説明していました。その後、2013年にDave Kleiman氏が亡くなった後、その遺族が共同採掘したビットコインを不正に占有しているとしてCraig Steven Wright氏を訴える事件が起きます。遺族は当時サトシ・ナカモトが保有しているとされていた110万BTCの内、半分の55万BTCを返還するよう求めました。2019年にはCraig Steven Wright氏が一審で敗訴し、ビットコインの支払いを命じられましたが、二審でこの命令が棄却され、最終的に返還請求は棄却されました。この訴訟では、Craig Steven Wright氏が実際にサトシ・ナカモト名義でビットコインを返還した場合、サトシ・ナカモトだと証明されることになるので大変注目されていました。しかし、結局、返還請求は棄却されて返還は果たされなかったため、Craig Steven Wright氏がサトシ・ナカモトだとは証明されませんでした。論文とビットコインの仕組みサトシ・ナカモトが発表した論文にはどのようなことが書いてあったのでしょうか。実はこの論文は原文が公開されています。Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash Systemまた、日本語に翻訳されたものもあるので、読みたい方は以下から読むことができます。ビットコイン: P2P 電子通貨システム論文は、P2P(ピア・ツー・ピア)のネットワーク上でこれまで分散型デジタル通貨を開発する上で問題となっていた二重支払いの問題の解決策の提案という形で始まります。本論の中から現在のビットコインにも組み込まれている仕組みについて、特に取引を行う人に関りのあるものをいくつか簡単に紹介します。トランザクションProof-of-Workインセンティブトランザクションは、ビットコインを転送する際の電子署名や検証の仕組みで、取引履歴を追う際にも用いられ、取引をしていく中でビットコインの取引を追うBTCScanなどで目にすることがあるかもしれません。Proof-of-Workはこの記事の前半でも解説しましたが、ある一定の作業(仮想通貨では複雑な計算問題)を課すことでセキュリティを高め、価値を証明するシステムです。インセンティブはマイニングの報酬設定についての説明で、半減期を繰り返してビットコインの採掘量が上限に達した際には、現在のようなマイニングしたことによる特殊な報酬はなくなり、トランザクション手数料(取引した際に支払う手数料)のみがマイニング報酬となることが示唆されています。他にはより細かな仕組みの解説や数学的な根拠なども示されていますが、ここで解説するには難しいので興味のある方は論文をご覧ください。まとめここまで仮想通貨の歴史について、ビットコインが登場する前の2008年まで見てきました。最後に、簡単にトピックをまとめておきましょう。1982年:デジタル通貨の概念が登場1998年:ビットコインの前身ともいえるBitGoldが考案2008年:ビットコインの論文がサトシ・ナカモトによって発表2008年までは仮想通貨自体は登場しませんが、ビットコインが公開された2009年から本格的に仮想通貨の歴史は始まっていきます。今回はVol.1ということで仮想通貨が始まるまでの歴史を簡単に解説しましたが、仮想通貨の歴史に興味のある方はぜひ次回の記事もご覧ください。次回の記事はこちら!【2009年~2010年】仮想通貨・ビットコインの歴史を学ぼう Vol.2