仮想通貨の歴史を学ぶシリーズVol.2ということで、今回も仮想通貨の歴史について学んでいきます。前回の記事はこちら!【~2008年】仮想通貨・ビットコインの歴史を学ぼう Vol.1こちらの記事で紹介した2008年までを簡単におさらいしましょう。2008年までの歴史では、1982年には既にデジタル通貨が考案されており、1980~1990年代にかけてデジタル通貨の開発とさまざまな分野への活用が進められてきました。1998年にビットコインの先駆けである「BitGold」が考案されましたが実装はされず、それからおよそ10年後の2008年にサトシ・ナカモトによってビットコインに関する論文が発表されました。ここまでが仮想通貨に関する2008年までの歴史でした。では、今回はその続きから見ていきましょう。2009年 - ビットコインの取引が始まるビットコイン稼働開始2009年の最大のトピックは、なんといってもビットコインが稼働を始めたことです。2009年1月3日(日本時間では4日)、ビットコインにおける「ジェネシスブロック(Genesis Block)」がサトシ・ナカモトにより生成されました。ジェネシスブロックとは、ブロックチェーンの中の最初にマイニングされたブロックのことであり、ビットコインが稼働を開始したというときにはこのジェネシスブロックが生成されたときのことを指すことが多いです。ちなみに、ビットコインのジェネシスブロックには、「The Times 03/Jan/2009 Chancellor on brink of second bailout for bank」という文字列が書き込まれています。これは「The Times」というイギリスの日刊新聞の名前と、日付、当時の新聞の見出しであり、この日にジェネシスブロックが生成されたというタイムスタンプ的な役割を果たしています。一方で、この言葉の意味は「The Times 2009年1月3日 財政担当大臣 二度目の銀行救済策目前」であり、現在の金融経済に対するサトシ・ナカモトからのメッセージなのではないかとさまざまな憶測がされています。一例として、起業家のAndreas Antonopoulos氏は、The Timesがこの見出しを出したときにビットコインのジェネシスブロックがマイニングされたのは偶然ではなく、ビットコインが開発された背景(既存の金融システムが万人に十分なサービスを提供できていないこと)を表していると予想しています。また、ビットコインのジェネシスブロックがマイニングされてから9日後、サトシ・ナカモトは史上初となるビットコインネットワーク上での取引を行い、Hal Finney氏に10BTCを送金しました。初のビットコイン取引所「New Liberty Standard」開設2009年10月、初のビットコイン取引所「New Liberty Standard」が開設されました。これまではビットコインに通貨としての価値は認められていませんでしたが、この取引所によって初めてビットコインの価値が確立されました。このときの価格は、1BTCあたり約0.07円。この当時の2009年から15年後の2024年には1BTCの最高値が1,000万円を超えたことを考えると、投資の中でも類を見ないほどの価格上昇率ですね。ちなみに、この約0.07円ですが、当時のビットコインのマイニングにかかる電気代から算出されました。今ではマイニング専用の機材だけでなくマイニング専門の企業まで存在し、個人でビットコインをマイニングできるのはほとんど奇跡とまで言われていますから、これだけの電気代で1BTCがマイニングできた当時は難易度がとても低かったことがわかります。2010年 - ビットコインで初めて現実の商品を購入初の実世界取引-ビットコインピザデー2010年5月22日、世界で初めてビットコインを用いた実世界取引が行われました。とはいっても、ビットコインはできたばかりでまだ一般には浸透していなかったので、実際に店舗との決済という形で行われたわけではありません。事の発端は2010年5月18日、フロリダ在住のプログラマーLaszlo Hanyecz氏が「ビットコインフォーラム」というサイトで10,000BTCをピザ2枚と交換してくれる相手を募集しました。これに対し、ロンドン在住の学生Jeremy Sturdivant氏が応じ、アメリカの宅配ピザ店「Papa Johns」にピザ2枚をオンライン注文しました。募集から4日後の22日、このピザ2枚を受け取ったLaszlo Hanyecz氏は、Jeremy Sturdivant氏に宣言通り10,000BTCを支払いました。このときの価格は、1BTCあたり約0.23円。このピザ2枚で日本円にしておよそ2,300円程度であり、当時のピザ代としては妥当な金額だったようです。2024年9月現在の価格では1BTCあたり800万円前後ですから、このピザ2枚を現在の価格に換算するとなんと800億円!世界中のどんな高級料理を探したとしても、このピザ2枚に勝るものはないでしょうね。さて、そんな初の実世界取引が行われた2010年5月22日を記念して、毎年5月22日はビットコインユーザーの間で「ビットコインピザデー」と呼ばれ祝われています。仮想通貨取引を行われているみなさんも、5月22日にはピザを食べてビットコインの歴史に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。ビットコイン取引所「Mt.Gox」開設2010年7月、ビットコインの黎明期を支え、一時は最大のビットコイン取引量を誇ったビットコイン取引所「Mt.Gox(マウントゴックス)」が開設されました。Mt.Goxは2009年に設立されていましたが、当初は世界的に人気なカードゲーム「Magic: The Gathering」のトレーディングカードを売買するオンライン交換所としてJed McCaleb氏によって開設されました。そこから2010年7月に事業を転換し、社名はそのままにビットコインの取引所としての事業を開始した形です。このMt.Goxのサービスが開始してからビットコインの価格は大きく上昇します。このときの価格は、1BTCあたり約7円。2009年10月にNew Liberty Standardで初めて値が付いたときには約0.07円でしたから、1年も経たない間に実に100倍にまで上昇しています。そんなMt.Goxでは、黎明期を支えた最大規模の取引所ということで、ハッキングを始め仮想通貨の歴史に残る事件が起きていくことになるのですが、その辺りはまた次回以降、事件が起きた年の回で解説していくことにします。ちなみに、Mt.Goxという社名は人気カードゲームのオンライン交換所という意味の「Magic: The Gathering Online eXchange」を略したもので、創業当時はビットコインとは関係がなかったことがわかります。また、創業者であるJed McCaleb氏はこれ以後、Mt.Gox以外にもRippleやStellarの設立者としても活躍していくことになります。まとめここまで、仮想通貨の歴史について、2009年~2010年を見てきました。最後に、簡単にトピックをまとめておきましょう。2009年1月:ビットコイン稼働!(ジェネシスブロックが生成される)2009年10月:初の取引所「New Liberty Standard」開設2010年5月:初の実世界取引が成立(ビットコインピザデー)2010年7月:「Mt.Gox」開設2008年まではまだ論文のみで開発段階だったビットコインが、2009年に公開されて本格的に稼働を開始していきます。ですが、この辺りの年は黎明期であり、一部のコミュニティで楽しまれていたものに過ぎず、現在ほど浸透していませんし、経済的な価値もまだまだ認められていません。そこからどうやって現在のような価値を持つまでに至ったのか、気になる方はぜひ次回の記事もご覧ください。前回の記事はこちら!【~2008年】仮想通貨・ビットコインの歴史を学ぼう Vol.1