仮想通貨の歴史を学ぶシリーズVol.3では、2011年〜2012年の仮想通貨の歴史について紹介していきます。前回の記事はこちら!【2009年~2010年】仮想通貨・ビットコインの歴史を学ぼう Vol.2こちらの記事で紹介した2009年〜2010年を簡単におさらいしましょう。2009年には、ついにビットコインが稼働開始し、初のビットコイン取引所New Liberty Standardが開設されて1BTCあたり約0.07円という価値が付きました。2010年は、5月22日に初めてビットコインを用いた実世界取引が行われ、この日は「ビットコインピザデー」として毎年ビットコインユーザー間で祝われるようになりました。また、同年にビットコイン取引所Mt.Goxが開設されました。ここまでが2009年〜2010年の歴史でした。では、今回はその続きから見ていきましょう。2011年 - ビットコイン初のバブル~Mt.GoxがハッキングされるMt.GoxがTibanne社に買収される2011年3月、Mt.GoxがTibanne社に買収されました。Tibanne社は、2009年にMark Marie Robert Karpelès氏によって日本で設立された会社で、サーバホスティング・クラウドホスティングなどのサービスを行っていました。Tibanne社は、たとえばフランスの銀行口座を持っているのに住所がペルーにあるためカード決済が通らない、といった問題を解決するため2010年の秋からビットコインでの決済を受け付け始めていました。そんな折、Mt.Goxを立ち上げたJed McCaleb氏から、取引所の運営を引き受けてくれないかとの打診があり、それを受ける形でTibanne社はMt.Goxを買い取りました。買収時点でのMt.Goxの利用者は2000人弱で、後に最大規模のビットコイン取引所になることを考えるとまだまだ利用者は少なかったようです。気になるビットコインの価格ですが、Mt.GoxがTibanne社に買収されたことをきっかけに、1BTCあたり70円台にまで高騰します。Mt.Goxのサービス開始時には1BTCあたり約7円でしたので、10倍近くにまで上昇したことになります。TIME誌でビットコインが取り上げられバブルに2011年4月、世界初のニュース雑誌として有名なアメリカのTIME誌にて、ビットコインの特集が組まれました。当時のオンライン記事がこちらOnline Cash Bitcoin Could Challenge Governments, Banks大手メディアにビットコインが取り上げられるのはこの時が初めてで、これにより1BTCあたり80円台にまで価格が上がります。これをきっかけに一気にビットコインの知名度は上がり、初めてのバブルが起こります。以下は2011年のビットコインの価格推移です。価格は4月の後半から急激に上昇し、6月半ばにピークを迎えていることがわかります。この6月半ばのピーク時には1BTCあたり2,000円前後にまで価格は高騰しており、TIME誌に取り上げられた4月半ばから見てもなんと2カ月程度で25倍近くにまで上昇しています。Mt.Goxがハッキングを受けるバブル真っ只中の2011年6月、Mt.Goxがハッキングを受けたことにより、相場は一気に下落相場へと切り替わります。前節でも紹介しましたが、もう一度、2011年のビットコインの価格推移を見てみましょう。ピークを迎えていた6月半ばから7月にかけて一気に価格が下落しています。それ以後も下落相場は落ち着かず、急落を繰り返す形で12月まで下落し続けました。底値となった11月下旬頃にはピーク時の2,000円台のおよそ10分の1、1BTCあたり200円前後にまで価格は落ち込みました。このことから、仮想通貨におけるセキュリティの重要さと、後に世界最大のビットコイン取引所となるMt.Goxがこの時点でいかに大きな影響力を持っていたかが伺えます。2012年 - ビットコイン初の半減期を迎えるコインチェック創業日本国内で仮想通貨取引をしている方の多くが知っているであろう取引所、Coincheckを運営しているコインチェック株式会社が2012年8月に創業しました。創業時の社名は「コインチェック株式会社」ではなく「レジュプレス株式会社」であり、コインチェック公式サイトによると、当初は取引所としてのサービスも運営していませんでした。同サイトでは、2013年2月に初のサービスとして実名制ユーザー投稿型サービスの提供を開始していると紹介しており、仮想通貨とはまったく関係がないサービスから始まっていることがわかります。仮想通貨の取引サービスCoincheckは創業2年後の2014年8月に提供開始であり、取引所としてのサービスが始まるのはまだ先ですが、国内の取引所を運営する会社のトピックとして紹介しました。WordPressがビットコインによる決済を開始2012年11月、WordPressがビットコインによる決済を開始し、WordPressの有料アップグレードがビットコインで購入できるようになりました。当時のWordPressの記事がこちらです。Bitcoin での支払いが可能になりましたこの記事によると、WordPressがビットコイン決済を可能にした背景には、それまで自国のシステムでは決済できない場合に電子マネー(PayPalなど)やクレジットカードが利用されてきましたが、それも国によっては制限されています。政治的な背景や不正行為を抑えるためなどの理由がありますが、そういった制限のせいでいくつかの国のブロガーがアクセスできなくなっています。一方で、ビットコインはすべての人が利用できる決済手段であり、こうしたオープンソース化はWordPressの考えに合致し、世界中のブロガーを支援する意味でもビットコインでの決済を可能にした、とのことです。この出来事と後述の半減期の影響で、ビットコインはバブルから一転して訪れた下落相場から回復していくことになります。初の半減期を迎える前節で紹介したWordPressでビットコイン決済が可能になったのとほぼ同時期、2012年11月にビットコインは初の半減期を迎えます。半減期とは、ビットコインのマイニング報酬が半分になる時期のことです。ビットコインはPoW(Proof-of-Work)という仕組みを持っており、マイニングという計算処理によって取引が承認されていきます。PoWやマイニングについて興味のある方はこちらも合わせてご覧ください。仮想通貨(暗号資産)のマイニングの税金・確定申告ってどうなるの?税金計算ツールへの登録方法も解説このマイニングという作業に成功すると報酬がもらえるのですが、半減期を迎えるとこの報酬が半減するわけです。ビットコインが稼働したときに設定されていたマイニング報酬は50BTCでしたので、最初の半減期を迎えた時点で25BTCにまで報酬は減ります。実際にはこれに取引で支払われた手数料が上乗せされるので、2024年10月現在の価格約900万円で考えると、半減してもとんでもない金額の報酬があるように見えますね。この半減期ですが、およそ4年に1度発生する程度に設定されており、2024年4月に迎えた半減期では報酬が3.125 BTCにまで減少しています。ビットコインは、半減期を繰り返すことでマイニングによって新たに生まれるビットコインの数を減らしていき、最終的に0にすることで発行上限となり、ビットコインの価値を維持する目的があります。そのため、半減期を迎えるたびにビットコインは発行上限に近付いていくので、希少性の高まりを期待する心理が働くので、半減期後は価格が上がる傾向があると言われています。最初の半減期でもその傾向は当てはまり、それまで下落相場であったビットコインの価格は持ち直して1BTCあたり1,000円台にまで回復することになります。まとめここまで、仮想通貨の歴史について、2011年~2012年を見てきました。最後に、簡単にトピックをまとめておきましょう。2011年3月:Mt.GoxがTibanne社に買収される2011年4月:TIME誌でビットコインの特集が組まれる2011年6月:Mt.Goxがハッキングを受ける2012年8月:コインチェック創業(当時はレジュプレス株式会社)2012年11月:WordPressがビットコインによる決済を開始2012年11月:ビットコイン初の半減期を迎える2009年1月にビットコインが稼働を開始してから4年間で、ビットコインの価格は1円未満だったところからピーク時には2,000円前後にまで大躍進を遂げています。その一方で、10分の1にまで価格が下落するような局面があり、この頃のビットコインは資産として非常に不安定で、一か所の取引所で起きた出来事で簡単に価格が上下してしまうほど取引できる場、取引する人が少なかったことがわかります。次回は2013年~2014年、さらにビットコインの価格上昇を後押しする出来事が起きていきますが、気になる方はぜひ次回の記事もご覧ください。過去の記事はこちら!【~2008年】仮想通貨・ビットコインの歴史を学ぼう Vol.1【2009年~2010年】仮想通貨・ビットコインの歴史を学ぼう Vol.2