仮想通貨の歴史を学ぶシリーズVol.7では、2019年~2020年の仮想通貨の歴史について紹介しました。前回の記事はこちら!【2019年~2020年】仮想通貨・ビットコインの歴史を学ぼう Vol.7こちらの記事で紹介した2019年~2020年をおさらいしましょう。2019年はバイナンスやビットポイントのハッキング被害というネガティブな事件から始まりましたが、Bakktによるビットコイン先物サービスの開始などの出来事に後押しされ、ビットコインの価格は2018年よりも高い水準で推移していきました。2020年にはWHOによる新型コロナウイルスのパンデミックを発表し、金融市場全体が不安感に包まれビットコインも急落しましたが、3回目の半減期という4年に一度の大イベントを経て1BTCあたり1,000,000円を安定して超えるようになり、続いて米大統領選などの出来事が重なった影響から年末には1BTCあたり2,500,000円を超える躍進を遂げました。ここまでが2019年~2020年の歴史でした。では、今回はその続きから見ていきましょう。この記事の要約2021年テスラ社が15億ドル分のビットコインを購入したことでビットコインは高騰コインベースがナスダックに上場し、世界初、仮想通貨関連企業としての上場を果たすエルサルバドルがビットコインを法定通貨に制定したことで再び高騰ビットコイン先物ETFが米SECに承認され、ETF上場初日としては歴代2位の取引高を記録2022年LUNAの大暴落「テラショック」が発生し、ビットコインも下落テスラ社が保有するビットコインの75%を売却し、さらに下落イーサリアムが大型アップデート「Merge」を実施しかし、大手仮想通貨取引所FTXが破綻したことでビットコインは急落2021年ーテスラ社がビットコイン購入~ビットコイン先物ETF承認テスラ社が15億ドル分のビットコインを購入2021年2月、米国大手自動車メーカーであるテスラ社が15億ドル分のビットコインを購入しました。15億ドルは当時のレートにして実に約1,600億円相当となり、この莫大な投資が行われた結果、ビットコインの価格は急上昇。2021年初頭には1BTCあたり3,000,000円前後の価格だったところから、2月中旬には1BTCあたり6,000,000円を超える価格にまで達し、ビットコインの史上最高値を更新しました。ちなみに、2025年現在でも仮想通貨といえば話題に上がるテスラ社のCEOイーロン・マスク氏は、この出来事以前から仮想通貨に関心を持っており、2021年1月には当時のTwitterの自己紹介欄を「#bitcoin」に変更しており話題となっていました。コインベースがナスダック上場2021年4月、米国最大手の仮想通貨取引所であるコインベースがナスダック市場に上場しました。仮想通貨取引所が金融市場に上場することは初めてのことで大きな関心が集まり、当時初値が381ドルであったところから、一時429.54ドルまで上昇しました。しかし、過度な期待感からかビットコインの価格が上昇し売りが強まると、コインベースの株価も下落し、初値を下回った価格で終値を迎えました。この出来事は一時的とはいえビットコインの価格に影響を及ぼし、それまで6,500,000円前後で推移していた価格は、一時的に1BTCあたり6,900,000円を超える価格にまで上昇しました。エルサルバドルがビットコインを法定通貨に制定2021年6月、エルサルバドルでビットコインを法定通貨とする法案が可決されました。ビットコインが法定通貨として採用されるのは世界初の出来事で、この法案を推進してきたナジブ・ブケレ大統領は「歴史的だ」と当時のTwitterに投稿しました。可決の約3か月後、2021年9月よりこの法律は施行され、このニュースによって市場は過熱し、5,000,000円程度だったところから施行後一か月ほどで1BTCあたり7,000,000円を超える価格にまで上昇していきます。しかし、この法案は財政的なリスクを高める結果となり、後にIMF(国際通貨基金)からの融資にビットコインの購入を制限する条件などが盛り込まれていく結果となりました。ビットコイン先物ETFが米SECに承認される2021年10月、ビットコイン先物ETFが米SEC(米国証券取引委員会)に承認され、米国で初めて仮想通貨の先物に連動したETFが上場されることとなりました。このETFは、米ETF大手のプロシェアーズが運用する商品で、NYSE Arca取引所で始まりました。これによりビットコインに投資マネーが流れ込み、1BTCあたり7,500,000円前後へと価格を伸ばしていくこととなります。ETFについては、以下の記事で詳しく解説していますので興味のある方はこちらもご覧ください。仮想通貨のビットコインETF/イーサリアムETFとは?特徴や仕組みを分かりやすく解説2022年ーテラショック発生~仮想通貨取引所FTXが破綻LUNAが大暴落した「テラショック」が発生2022年5月、LUNAが歴史的な大暴落を記録した「テラショック」が発生しました。Terraform labsによって開発されたステーブルコインUSTは米ドルとペッグ(連動)していましたが、このUSTが大量に引き出されたことによってUSTと米ドルのペッグを保証していたLUNAが大暴落しました。この大暴落は一週間で実に99%を超える下落を記録し、当時仮想通貨の時価総額ランキング10位にまで入っていたLUNAは一気に陥落していくこととなります。このテラショックによるLUNAの価格崩壊は、LUNAだけでなく仮想通貨市場全体への不信感を引き起こし、それまで5,000,000円前後を推移していたビットコインはこの出来事を境に1BTCあたり3,500,000円程度にまで落ち込みました。これはひとえにUSTというステーブルコインがアルゴリズム型で無担保のステーブルコインであったことに起因しますが、このあたりのステーブルコインの種類について詳しくは以下の記事で解説していますので、こちらもご一読ください。ステーブルコインの種類や関連銘柄は?特徴や代表的な通貨も7個紹介テスラ社が保有する75%のビットコインを売却2022年7月、2021年2月に15億ドル分のビットコインを購入していたテスラ社が保有しているビットコインの約75%を売却しました。テスラ社は2021年4月にも保有分の10%を売却しており、それに加えて今回の売却によってデジタル資産を2億1800万ドルに縮小させました。イーロン・マスク氏は、新型コロナウイルスによるロックダウンなどによる業績悪化に備えて現金を最大化させるために売却したと説明し、ビットコインに対する判断ではないとしています。このニュースは価格を落ち込ませ、それまで3,200,000円前後だったところから1BTCあたり2,900,000円程度に下落させましたが、これは一時的なものですぐに元の水準に回復していきました。イーサリアムが「Merge」アップデートを実施2022年9月、イーサリアムが「Merge」アップデートを実施しました。このアップデートは主にコンセンサスアルゴリズムをPoW(Proof of Work)からPoS(Proof of Stake)に移行することを目的としており、これ以後、イーサリアムはPoSのチェーンとして稼働していくことになります。PoWはビットコインにも採用されており、複雑な計算式を解くマイニングを行うことで価値を維持するシステムで、仮想通貨の価値やセキュリティの根幹を成す一方マイニング争いによって膨大な電力を消費することが問題視されていました。そこでイーサリアムは環境負荷が低いPoSに移行することとなりました。このあたりの仕組みについては以下の記事で詳しく解説していますので、こちらもご覧ください。仮想通貨の仕組みとは?ブロックチェーンとは何かやメリット・デメリットを分かりやすく解説!このイーサリアムの大規模なアップデートによる影響はビットコインにはほとんどなく、1BTCあたり2,800,000円前後を維持していました。一方で、イーサリアムはこのアップデート前から続いていたリスクオフムードの煽りを受けてか価格は下落を続け、アップデート前後の10日ほどで1ETHあたり250,000円前後から190,000円程度にまで価格を落としました。大手仮想通貨取引所FTXが破綻2022年11月、大手仮想通貨取引所FTX Tradingを運営するFTXグループが破綻しました。FTXグループは日本法人のFTX Japanを含む約130の関連会社が米連邦破産法11条の適用を申請したことを発表するとともに、当時のCEOサム・バンクマン=フリード氏が辞任を発表しました。これは単なる経営破綻ではなく、不正行為やずさんな経営によるものとされ、サム・バンクマン=フリード氏は詐欺を始め7つの罪で有罪となりました。この事件は仮想通貨市場全体に影響を及ぼし、ビットコインは3,000,000円台で安定していたところからこの事件を境に一気に1BTCあたり2,300,000円程度に急落しました。この一連の事件については以下の記事でも解説していますので、こちらも併せてご覧ください。仮想通貨の詐欺事件まとめ!逮捕者が出た事例や見分け方・回避方法について解説まとめここまで、仮想通貨の歴史について、2021年~2022年を見てきました。最後に、簡単にトピックをまとめておきましょう。2021年2月:テスラ社が15億ドル分のビットコインを購入2021年4月:コインベースがナスダック市場に上場2021年6月:エルサルバドルでビットコインを法定通貨とする法案が可決2021年10月:ビットコイン先物ETFが米SECに承認2022年5月:LUNAが歴史的な大暴落を記録した「テラショック」が発生2022年7月:テスラ社が保有しているビットコインの約75%を売却2022年9月:イーサリアムが「Merge」アップデートを実施2022年11月:FTX Tradingを運営するFTXグループが破綻2021年にはビットコインにとってポジティブな出来事が立て続けに起こり、2020年後半から始まったビットコインバブルを一気に最高値まで引き上げていきました。しかし、2022年に入ると逆にネガティブな出来事がいくつも発生し、2021年に記録した最高値から半額以下にまで急速に押し戻される結果となりました。大きな出来事がいくつもあったとはいえ、この2年は良い意味でも悪い意味でも仮想通貨という商品のボラティリティの大きさが浮き彫りになった期間と言えるでしょう。ボラティリティの大きさという意味では2024年11月~12月の米大統領選による仮想通貨バブルが記憶に新しい方も多いと思いますが、今回紹介したように急騰の後に急激な下落も発生し得ることを理解した上で、慎重に立ち回っていきたいですね。さて、次回は2023年~2024年、2022年から引き続いた低迷から半減期や米大統領選などが重なり激しく相場が動いた2年間を解説していきます。ぜひ次回の記事もご覧ください。関連記事【~2008年】仮想通貨・ビットコインの歴史を学ぼう Vol.1【2009年~2010年】仮想通貨・ビットコインの歴史を学ぼう Vol.2【2011年~2012年】仮想通貨・ビットコインの歴史を学ぼう Vol.3【2013年~2014年】仮想通貨・ビットコインの歴史を学ぼう Vol.4【2015年~2016年】仮想通貨・ビットコインの歴史を学ぼう Vol.5【2017年~2018年】仮想通貨・ビットコインの歴史を学ぼう Vol.6【2019年~2020年】仮想通貨・ビットコインの歴史を学ぼう Vol.7