仮想通貨は株式などと比べてもボラティリティが大きく、リターンが大きければリスクも大きな投資です。そのため、期末に損益計算をしてみると損失が出ていることもあれば、予想以上に利益が出てしまっている場合もあると思います。利益が大きいのは嬉しいことですが、反面、気になるのは税金ですよね。仮想通貨の税金については、少し調べるだけでも高額であることを示す検索結果が出てきますので、あまり仮想通貨周りの税制度を知らない方でもなんとなく「高そう」とは感じているのではないでしょうか。では、そんな高額になりがちな仮想通貨の税金を節税する方法はないのでしょうか。そこで本記事では、個人で仮想通貨取引を行う場合の税制度の簡単な解説とその節税方法について紹介していきます。仮想通貨の税金は高すぎる?最初に、仮想通貨の税金について簡単に解説しましょう。仮想通貨の税金は高いとよく耳にしますが、実際に仮想通貨の税金は株式や国内FXと比べても高額になりやすいです。その主な理由は、仮想通貨取引で得た所得の区分にあります。仮想通貨取引で得た所得は雑所得に分類され、総合課税の対象となるので累進課税が適用されます。累進課税制度は、所得が大きくなるほど所得税の税率が上がる仕組みのことで、この表に記載されている通り、4,000万円以上の所得があると実に45%もの所得税を支払わなければなりません。一方で、株式や国内FXで得た所得の場合、申告分離課税が適用されるため所得がどれだけ大きくても所得税は一律で15%となるので、所得が大きくなると仮想通貨は税制度的にかなり不利になります。ですので、仮想通貨取引での所得が大きくなりそうな場合には、ぜひ節税していきたいところです。仮想通貨の税制度については以下の記事で詳しく解説していますので、合わせてお読みください。【最大55%】仮想通貨(暗号資産)の税金がやばい仕組みとは?高すぎる理由と節税対策を紹介個人で取引する場合の損益計算方法について節税方法の前に、節税に使える知識として個人で取引する場合の損益計算方法について解説しておきましょう。仮想通貨の損益計算方法は総平均法と移動平均法があり、個人投資家は計算方法を選択できますが、特に申請しない場合は総平均法になります。個人で総平均法で損益計算を行う場合、1月1日~12月31日までの取引をまとめて計算します。計算方法は、各仮想通貨について1月1日~12月31日までを合算し、売却総額-(平均取得単価 × 売却総数)= 損益で損益を算出します。こちらの総平均法での損益計算方法が節税において重要で、以後の章でも紹介しますが、期末までの取引を合算して損益を算出するので、後から損益調整が可能になります。総平均法での損益計算方法について詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。仮想通貨(暗号資産)の確定申告で役立つ総平均法の損益計算方法を解説!個人でできる節税方法とは個人でできる節税方法を、損益調整による方法と制度による方法の大きく2種類に分けて7つ紹介していきます。中には難しい方法もありますが、期末でもすぐにできる方法もありますので、確定申告前に少しでも節税したい方は試してみてはいかがでしょうか。損益調整による節税方法まず、損益調整による節税方法を紹介します。損益調整による節税方法は、後述の制度を利用した節税方法と違い申請等も不要で、期末になってからでもすぐにできるものもあります。1. 利益が大きい通貨を追加購入する年度内に利益が大きくなってしまった通貨を追加で購入すると、節税になる場合があります。方法としては非常に簡単で、利益が大きくなってしまった通貨について、購入した時点から時価が上昇していた場合に年度内に追加で購入しておくだけです。仕組みとしては、前章で紹介した総平均法の損益計算方法を利用したもので、総平均法では年間を通しての平均取得単価を元に取得原価を算出します。ですので、時価が上昇したときに追加で購入することで平均取得単価を上げると取得原価も上がるので、利益を圧縮することができます。ただし、こうして追加で購入した通貨は次年度に繰越されるため、追加購入した通貨を売却した時点でその分の利益を計上することになるので、複数年度に渡って見ると大きな節税にはなりません。今年度の利益を圧縮したい、というときにこの節税方法を使うようにしましょう。この節税方法については以下の記事で詳しく解説していますので、合わせてご覧ください。確定申告前に必見!仮想通貨投資で期末にできる損益調整による税金対策方法とは2. 含み損のある通貨を売却する他の投資でも行われる節税方法ですが、含み損を確定させるのは仮想通貨でも有効です。方法としては、年度をまたぐ前に含み損のある通貨を売却して損失を確定するだけです。仮想通貨の損益は他の所得と損益通算できませんが、同じ仮想通貨による利益と損失であれば通算が可能なので、損失を確定させることがそのまま利益の圧縮に繋がります。注意点として、損失は翌年に繰越すことができないので損失を確定させるタイミングには気を付けましょう。3. 売れない通貨を処分する先ほど紹介した含み損のある通貨を売却する方法と似ていますが、仮想通貨の引き取りサービスなどを利用して売れない通貨を処分することも節税になります。売れない通貨というのは、たとえば上場されなかったICOプロジェクトや、流動性が低すぎて取引できなくなってしまった通貨などのことです。これらの売れない通貨は含み損を確定させることができませんが、クリプトリンクのトラッシュサービスを利用して処分すると0円で売却したことと同じ処理にすることができます。これにより損失を確定させることができるので、損益通算により利益を圧縮できます。こちらの場合も、損失は翌年に繰越すことができないので引き取りサービスを利用するときにはタイミングに注意しましょう。4. 売却等をせず保有し続ける利益を調整し、損失を確定させた上で、どうしてもこれ以上今年度の含み益を確定させると利益が大きくなりすぎてしまう場合、売却等の取引をせず保有し続けるという方法があります。仮想通貨は、個人で保有しているだけなら、含み益がどれだけ大きくなっても課税されることはありません。この辺りについては以下の記事で解説していますので、詳しく知りたい方はこちらもご一読ください。保有だけでも注意!仮想通貨(暗号資産)は持ってるだけで税金がかかる!?いずれ利益が出るような取引を行った際には利益が確定してしまいますが、その取引を行うまでは課税されませんので、今年度はこれ以上利益を大きくしたくないというときに使いましょう。5. 年間20万円以下の利益に調整する仮想通貨による利益は雑所得で、年間20万円を超える利益から所得税がかかります。ですので、年間の利益を20万円以下に調整することでその年度の所得税を支払わずに済ませることができます。20万円からかけ離れた利益が出ている場合には難しいですが、少額での仮想通貨運用をされている方であれば、ここまでに紹介した節税・利益圧縮方法で20万円以下に調整できるかもしれません。ただし、年間の利益が20万円以下では所得税がかからないだけで、住民税はかかってきますので注意しましょう。また、仮想通貨での利益が20万円以下で所得税がかからない場合でも、確定申告は必要な場合がありますので、以下の記事も合わせてご確認ください。利益が20万円以下なら確定申告は不要?仮想通貨の税金について説明します制度による節税方法次に、制度を利用した節税方法を紹介します。制度を利用した節税方法は申請が必要になるなど、損益調整による節税方法に比べて難しく、期末に急に行うこともできませんので、運用状況などを考えて事前に準備しておく必要があります。6. 仮想通貨取引にかかる経費を計上する仮想通貨取引にかかる経費を計上することができる場合があります。仮想通貨取引における経費とは、たとえば取引手数料やマイニング機材、電気代などが挙げられます。これらを経費として計上できれば、その分、所得が圧縮されるため節税になります。ですが、個人で仮想通貨取引を行っている場合、これらの費用が経費として認められることは難しく、ほとんどの方は特に経費を計上せずに申告を行うことになると考えられます。その上で、何か経費として計上したいと考えている方は、お近くの税務署や顧問税理士に相談されることをおすすめします。7. 個人事業主として開業する個人事業主として開業するのも大きな節税に繋がります。個人事業主として開業すると、以下のようなメリットがあります。最大65万円の控除が受けられる青色申告を申請できる所得を事業所得として計上できる可能性があり、損益通算や損失の繰越ができる少額減価償却資産の特例がある などこれらのメリットはいずれも節税に繋がるものなので、ぜひ個人事業主になりたいと考える方もいるかもしれませんが、個人事業主として開業するにはいくつかの条件があります。ビジネス規模の収入(300万円超が目安)があること帳簿書類を保存していること開業届を提出していること上記は最低限の条件であり、これ以外にも継続的に事業が行われているか、独立しているかなどの観点でも判断されます。ですので、サラリーマンが副業で行っている場合や、継続的に投資が行えていない場合には認められないこともあります。このように個人事業主として開業するのは難しく、さらに仮想通貨取引の所得が事業所得として認められることも非常に難しいため、普通に仮想通貨取引を行っている分にはこの節税方法はあまり現実的ではありません。その上で、個人事業主として開業することを考えている方は、お近くの税務署や顧問税理士に相談されることをおすすめします。無申告だとより税金を払うことにここまで節税方法について解説してきましたが、絶対に行ってはいけないことが一つあります。それは、節税を考えるあまり無申告で税金逃れをしようとすることです。ビットコインが公開されたばかりで取引所も少なかった頃には、もしかしたら税金を支払わなくてもバレなかったことがあったかもしれません。ですが、現在では仮想通貨の税金周りの制度はかなりしっかりと整備されており、そのための監視や情報収集にも余念がありません。たとえば、租税条約という条約で海外取引所の情報も日本に共有されていたり、2019年には国税庁が仮想通貨取引を含むインターネットビジネス専門のチームを発足させていたり、税金から逃れるのは非常に難しくなっています。そして、無申告の場合、ペナルティによって本来支払っておけば済んだ税金以上の税金が徴収されることがあります。ペナルティには以下のようなものがあります。延滞税無申告加算税重加算税(悪質な場合)これらのペナルティを受けないためにも、確定申告は必ず正確に行うようにしましょう。ここでは簡単な紹介に留めましたが、無申告がバレる理由やペナルティについて詳しくは以下の記事で解説していますので、興味のある方はこちらもご覧ください。要注意!仮想通貨(暗号資産)の税金がバレないは間違い!理由と無申告の危険性を解説クリプトリンクで簡単に損益計算しよう節税方法の中でも損益調整による節税は、正確に損益を把握しておかなければ実施できません。そのためにも、期末にまとめてではなく、逐次、取引履歴などを元に損益計算を行って損益を確認しておくことが大切です。ですが、複数の取引所を使っていたり、ウォレットを使っていたりすると損益計算が非常に煩雑になりますし、取引履歴やトランザクションを確認するだけでも一苦労です。そんなときにはクリプトリンクの損益計算ツールが大変便利です。取引所の取引履歴ファイルをアップロードするだけで簡単に明細が取り込め、ウォレットもアドレスを登録するだけで自動で明細を作成してくれます。自動で損益計算されるので、いつでも損益が確認でき、節税のために損益調整を考える際にも役立ちます。また、損益調整に利用した後、収支計算報告書の作成、会計ソフトにインポートできる仕訳の作成まで行えるので、確定申告にそのまま利用できます。節税のために損益調整を考えている方は、ぜひクリプトリンクの損益計算ツールをお試しください。損益計算ツールの詳しい内容や使い方については以下の記事で紹介していますので、興味のある方はぜひこちらもご覧ください。「リニューアル版」損益計算ツールの収支計算方法をご紹介します!まとめここまで仮想通貨の税金についての簡単な紹介と節税方法について解説してきました。では、最後におさらいしておきましょう。仮想通貨の所得は雑所得に分類され、総合課税で累進課税制度の対象なので株式などと比べて高くなりがち節税方法には以下のものがある 利益が大きい通貨を追加購入する 含み損のある通貨を売却する 売れない通貨を処分する 売却等をせず保有し続ける 年間20万円以下の利益に調整する 仮想通貨取引にかかる経費を計上する 個人事業主として開業するペナルティがあるので節税は考えても無申告は絶対にやめようクリプトリンクの損益計算ツールなら損益調整にも役立つ節税方法をいくつか紹介しましたが、仮想通貨の運用状況によってできるものは限られてくると思います。今年は利益が大きくなったなどで節税を考えている方は、確定申告の直前になってしまう前に一度ご自身の運用状況を整理して、どんな節税ができるか考えてみてはいかがでしょうか。