仮想通貨と聞くと、「怪しい」という印象を持つ方もいるでしょう。実際には、ビットコインやイーサリアムといった代表的な仮想通貨は、今ではSEC(米国証券取引委員会)によってETFとしても認められるほど資産価値が認められています。その一方で、悪質な情報操作、詐欺的な運用がされている仮想通貨や、不正な取引所が存在するのも事実です。株やFXなど他の投資でも怪しい話を聞くことはあると思いますが、仮想通貨は技術的にできることが多く、誰でも開発に参加できるため、こうした事件が起きやすい一面があります。そこで本記事では、仮想通貨詐欺の主なパターンと実際に起きた事件について紹介していきます。最後にはそうした仮想通貨詐欺にあわないために知っておくべき回避策についても解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。仮想通貨に関する詐欺や悪質な事例具体的な事件を紹介する前に、仮想通貨詐欺の主なパターンをいくつか紹介します。投資全般で見られる詐欺もあれば仮想通貨特有の詐欺もあるので、他の投資を経験している方でも仮想通貨取引を始めるときには改めてこの辺りを調べておくことをおすすめします。フィッシング詐欺投資に限らずよくある詐欺の一つ、フィッシング詐欺は仮想通貨でも注意しておかなければなりません。フィッシング詐欺とは、公的機関や企業などからの連絡だと誤認させるようなメールやSMSを送り付け、リンクやURLをクリックさせて偽のサイトに誘導し、パスワードやクレジットカードなどの情報を騙し取ろうとする詐欺です。取られてはならない重要な情報はさまざまあると思いますが、仮想通貨取引では各取引所のパスワードからウォレットのシードフレーズなど管理すべきものが多くなりがちなので、特に注意しておかなければなりません。偽のサイトやアプリ仮想通貨取引所やウォレットのサイトやアプリを模して作られた偽のサイトやアプリによる詐欺も存在します。公式のものと誤認させ、パスワードやクレジットカードなどの情報を抜き取ったり、自身のウォレットから仮想通貨を送金させるよう仕向けたり、といった詐欺が行われます。AppleやGoogleのアプリストアに紛れ込んでいる場合もあるので、こうしたアプリをインストールする場合には公式のものか必ず確認しましょう。情報操作(インサイダー取引など)メールやSMS、偽のアプリなどに注意して正規に取引したとしても気を付けなければならないものに情報操作があります。X(旧Twitter)を始め、SNSで仮想通貨投資に関する情報を集めていると、ミームコインやマイナーなコインが「これから上がる!」と宣伝されていることがあります。参入者が少ないマイナーなコインは、情報操作によって大きく時価を変えることができるので、これを利用して儲けようとする情報操作である可能性に注意しなければなりません。中にはフォロワーが多いユーザーや著名人が宣伝している仮想通貨もあるので信じてしまいそうになるかもしれませんが、投資に確実なものはありませんので情報源を調べるなどの情報リテラシーを持つことが大切です。また、仮想通貨ではインサイダー取引が未だに盛んに行われている現状があります。仮想通貨は特性上、株式を始めとするその他の投資と比べてもインサイダー取引を取り締まるのが難しく、そうした人々の情報操作や取引が時価に影響する場合もあります。不正なICOや取引所仮想通貨特有の注意しなければならないこととして、不正なICOや取引所があります。ICOについて簡単に説明しますと、新しい仮想通貨を発行して資金調達を行う方法で、ユーザーはその新しい仮想通貨が上場される前に発行者である企業や団体が設定した金額で購入することができます。これを利用して、新しい仮想通貨を発行すると宣伝し、実際にサイトも作って資金を集めはするものの、上場はせずに資金を持ち逃げするといった詐欺が行われたことがあります。また、不正な取引所にも注意しなければなりません。この不正な取引所とは、先ほど紹介した偽の取引所とは違い、詐欺的な運用をしている取引所のことで、後述のFTX事件などがその代表例です。実際に起きた事件とは前章で主なパターンを確認したところで、では実際にどのような事件があったのか見ていきましょう。架空の投資話による詐欺架空の投資話を持ちかけられ、その投資話に乗った結果、お金を騙し取られるという昔からある詐欺は仮想通貨詐欺でも使われる手口です。日本では、偽の仮想通貨取引ファンドを運営し、お金を騙し取った事件が実際に起きています。元運用役に実刑判決…暗号資産投資巡る“OZプロジェクト”詐欺事件 49歳男に懲役3年・罰金500万円の判決内容としては、AI取引システムを利用して仮想通貨取引の自動運用ができ、それで高額の配当を得ることができるとの架空の儲け話を持ちかけ、ファンドに出資させ、お金を騙し取っていました。セミナーやブリーフィングを開催し、LINEなどのメッセージアプリやSNSを用いて投資家グループを形成し、さらにその参加者に参加者を呼んでもらうという方法で出資者を集めていったため、投資家のみならずその親類や友人まで参加してしまったようです。AIを用いた仮想通貨の自動取引は珍しいものではなく、実際に存在しますが、もちろん確実に儲かるシステムはありません。また、この事件では詐欺師からの情報ではなく、友人などの信頼できる人からの情報で参加してしまった人がいることからも、信頼できる人からの情報であろうと情報源や信頼性は必ず自分で確認しなければならないことがわかります。不正なICOによる詐欺不正なICOによる詐欺では、以下のような事件が起きたことがあります。米SEC、8億円以上のICO詐欺で容疑者を提訴内容としては、「Denaro」という仮想通貨プロジェクトのICOを行い、投資家が参加して出資したものの、運営チームがICO終了の1週間前に投資家との連絡を絶って出資金を持ち逃げしたものです。この事件はあくまで一例で、まだ仮想通貨の仕組みが整いきっていなかった頃、こうしたICOを利用した詐欺は多くありました。今でこそ、取引所を仲介人として挟むことで信頼性を高めたIEOなどの仕組みができており、プロジェクトの背景を調べるのはそこまで難しくありません。ですが、未だにこの手口は使われ続けているので、ICOに参加する際には本当に信頼できるものなのか下調べを徹底しましょう。FTX事件仮想通貨の歴史の中でも大きな出来事、FTXという大手の取引所が破綻した騒ぎにおいて、共同設立者であるサム・バンクマン=フリード氏が詐欺を始め7つの罪で有罪となる事件がありました。FTXとは2019年5月に設立された仮想通貨取引所で、世界でも有数の取引所となっていましたが、2022年11月に経営破綻したことで大きな騒ぎを起こしました。フリード氏が行っていたのは、顧客や投資家からFTXを通して集めたお金を自らが経営する投資会社アラメダ・リサーチに流用し、高リスクの取引や負債の返済、政治献金に当てたなどの不正行為です。また、FTTというFTX自身が発行したトークンを金融資産として用いて企業買収などを行ったことで経営が行き詰まったなどのずさんな経営内容も問題視されました。この事件は信頼されていた取引所による大規模な詐欺事件だったので、ユーザーとしては気を付けるにしても難しい部分があります。ちゃんと定期的に監査を受けており、認可を受けている取引所であれば受けていない取引所より信頼できるので、取引所を選ぶ際にはそうした観点での確認もしてみるとよいでしょう。仮想通貨詐欺の見分け方や回避方法最後に、仮想通貨詐欺の見分け方や回避方法を紹介します。これらを意識するだけでも事件に巻き込まれる可能性は減らせるので、ぜひ普段から意識しておいてください。セキュリティ対策を徹底する詐欺以外にも不正なハッキングなどの事件もあるので、自分のウォレットを防衛するためにもまずはセキュリティを確認しておきましょう。具体的には、誰にでもできる対策として、取引所で使っているパスワードはオンラインのツールやネットに繋がったPCでは管理しないこと、取引所の二段階認証は必ず設定しておくことが挙げられます。また、MetaMaskなどのアンホステッドウォレットを使用している場合、パスワードに加えてシードフレーズもオフラインのPC、あるいは紙などの物理的なもので管理することが推奨されています。ここまでの対策をした上で、これらのパスワードやシードフレーズ、クレジットカード番号だけでなくユーザー特定に繋がるどんな情報も他人に漏らさない意識が大切です。儲け話はまず疑うどんな投資にもいえることですが、儲け話はまず疑いましょう。株式やFXと同じで、仮想通貨でも確実に利益を得られる手段は絶対にありません。ですので、「確実に儲かる」「絶対に損しない」といった言葉で誘ってくるのは十中八九詐欺だと考えてよいでしょう。仮想通貨は投資の中でも歴史が浅く、ブロックチェーンやマイニングなど馴染みのない方には理解が難しい仕組みもあるので、初心者には株式やFXよりも知識を付けづらい面があります。そのせいで「なんだかよくわからない技術だけど儲かるのか!」と思って詐欺被害にあってしまうことも考えられます。可能であれば仮想通貨の技術的な部分を少しでも理解しておくと、こうした儲け話を持ちかけられたときに冷静に判断ができます。そうした技術的な部分を理解するのがどうしても難しいという方は、「仮想通貨といえど確実な儲け話は絶対にない!」ことを意識しておいてください。ICOは主催者を確認して慎重に仮想通貨取引でICOに参加することを考えている方は、恐らくある程度の取引を行ってきた経験者の方だと思います。取引所を介して行われるIEOなどの形式であれば比較的信頼できますが、第三者を介さないICOの場合、どうしても参加したい場合は事前に十分に情報を収集するところから始めてください。ICOでは一定の時間が経過すると購入価格が上昇したり、高倍率のステーキング報酬があったりするので、焦って参加したくなってしまうかもしれませんが、落ち着いて情報収集をしましょう。また、ICOはニュースサイトなどで取り上げられたり、YoutubeやXなどのSNSで過剰に宣伝されたりする場合もあるので注意が必要です。最低限、今後の見通しを記載したホワイトペーパーに目を通し、ICOの主催者である企業や団体が信頼できるかどうかは確認しておかなければなりません。その上で、詐欺かもしれないことを念頭に置いて余裕資金で慎重に参加するようにしましょう。まとめここまで仮想通貨詐欺について、詐欺のパターンと具体的な事件から回避方法まで解説してきました。では、最後に簡単におさらいしておきましょう。仮想通貨詐欺のパターン フィッシング詐欺 偽のサイトやアプリ 情報操作(インサイダー取引など) 不正なICOや取引所 など仮想通貨詐欺には単純な投資詐欺や不正なICOの詐欺から、FTX事件という取引所ぐるみの大規模な詐欺もある詐欺の対策として、セキュリティの徹底、儲け話はまず疑う、ICOなどの取引では背景を調べるなどがある記事内でも言及していますが、詐欺の種類も対策もここに記載しているものはほんの一部でしかありません。仮想通貨取引をされている方やこれから取引を始めようという方は、ぜひその他の詐欺や対策についてもご自分で調べてみることをおすすめします。